<ヤカンの精>

 

 

この一昔前の時代

貧乏でツイてない冴えない男がいた。

兄弟は4人いて一番どんくさい人間。

何かあるとすぐ周りが自分と他の兄弟を比べる。

 

そういう環境で育った。

 

もう一度言う、少しだけ古い時代の話だ。

 

 

 

くたくたになって帰ってきた。

やれやれと、男はカップラーメンを食べようとヤカンでお湯を炊いていた。

男は勉強が苦手で

尚且つ

自他ともに自分自身を卑下する性格でした。

 

 

「オレは・・もう・・・ダメだぁ・・・・・グスン。。。。」

 

シューーシューーーシューー・・・

「やっと、お湯が沸いた」

 

「ヤカンのお湯が少し残ったで水を足してストーブの上において冷えを少しでも・・・寒いからなぁ・・。。」

「カップ麺も、3分より5分、10分ふやかして量を多くして食べよう」

「金も小銭しかもう残ってないしなぁ」

 

 

男は、崖っぷちでも生きることを、その望みを捨てずに踏ん張っていました。

 

「しかし、今日はホントに疲ぁーれた」

「会社や取引先の嫌なヤツに頭を下げていないといけないし、まぁ、それが社会だけど・・・。」

「能力社会のハズでしょ?」

「やってられっか、クソッ!!」

 

バキッ

 

・・・・

・・・・・・空き缶を潰した。。。。。

 

「あぁーーー腹減ったぁ、、カップ麺まだ ふやけねぇーかなぁ」

「眠いなぁ・・・。」

 

~うとうと~

 

男は夢を見た。

「あぁーーなんかイイ匂いだなぁ」

「あっ、オレの一番好きな餃子の匂いだ!!」

「えっ!?」

「は!?」

「か、母さん!?」

 

母「アンタは小さい頃から手のかかる子やねぇ。」

「ほら、アンタの好きな餃子だよ!」

「四人も兄弟がいる中で一番手のかかる!」

「母ちゃんの餃子、腹いっぱい食べな!」

 

 

男「んん!これさぁ、アニキが包んだやつもある。」

 

母「つべこべ言わず食べな!」

 

男「確かにアニキの作った餃子は見た目がキレイだ。」

「会社も学校もそうだよなぁ・・見た目が・・・・・女の子にも・・・・。」

「あ、あのさ、母さん・・、おれ、し、し、死・・・の」

 

母「大丈夫っっ!!」

 

 

男「あ、あの、母さん」

男は うすうす夢だと感じて

また他の3人の兄弟と比べられると思いココロを守ろうとした。

 

 

でも!!!

 

母「言ったよっ!大丈夫だってっ!!」

「アンタは四人兄弟で一番手がかかる」

「だけどね、一番手のかかる子が・・一番・・・・に・・・・」

 

男「なに!?なに!・・一番なに?!」

 

母「見た目・・・・・も・・ね・・・・」

 

 

・・ふと思った。

確かにアニキの包んだ餃子みたいに姉やアニキや弟も、身なりを小ぎれいにしている。

人間は相対して話してみるまでは8~9割見た目で判断されると誰かが言ってたし、啓発本にも書いてあった。

 

 

 

男「そう!大抵の人は、というか世間は見た目で判断する。」

「だったら、母さん・・!!こっからフライパン返しをするよ!!」

 

「この餃子(話)のようにひっくり返す!」

「死んでいる暇があるかよっ!!」

 

 

「世間では見た目が第一印象になる」

 

だが、しかし、

見た目が キッチリカッチリしてても、

 

お給料が見合ってなかったら?

折角の良いスーツを着ているのに使いっぱしりでは?

良い革靴を履いているのに使いっ走りでは?

 

他にもね大事なのは仕事よりも在るハズだ。

 

 

男は自分自身の卑下に今更ながら滝のように記憶が、今までの育ってきた記憶がよみがえった。

 

男「そうか!母さん、一番大事なのは お金じゃなくて自分を・・・・」

 

母「アンタはバカだねぇ。」

「一番はお金だよ?」

「お金が無きゃ家族を養えないし、家庭の時間、家族の時間なんて持てないんだよ?」

 

母「そして お金を稼ぐときには身ぎれいにしな!」

「無理してでもスーツも靴も良いものを買いな!」

「羊質虎皮になりな!初めは、、というか成功してもずっと、チャンスは・・・・必ず・・来る!!」

「お金は、小銭だけの時も使うところで、使わずして何になる!」

 

「お金は使うもの!使われたら お終いだよ。」

 

「そして、ヒトの三大欲の食欲」

「ヒトは食べないと身体も回復しない」

 

<だからまず 食べな!!>

「腹が減っては会社(戦)には行けぬ」ってね。

「じゃあ 母ちゃん行くよ。」

 

 

か、母さん!!!

オ、オ、オカンッッ!!!!

 

 

 

 

バゴンッッ!!!!!!!!!

 

 

 

 

男「んー、や、、や、、やかん?」

「あぁーはいはい、ヤカンとオカンね。。多分。。。」

 

ストーブに置いたヤカンの蒸気で、

もくもくやんけ!

 

 

「あー、腹減ったぁーー。」

「カップ麺ふやけすぎたな」

「いまから有金で、まずオレの食いたい物、餃子を食べれる店はっと、、、」

 

 

男は母親に言われたように、まず食べようと、まず!

 

「ここ!食いに行く!今あるだけの小銭で!!」

 

行動は思ったらすぐ動く!

今は餃子を食べたい一心で!!

ベクトルは餃子!!

今、このタイミング!!思ったら行動!!

カップ麺? 餃子?

2兎を追うものは?

 

 

「んんーーー!!食いたい!だから、2兎を追ってダメなら・・・・」

「100兎追ってやる!!」

「明日は上司に千円だけ貸してもらい朝飯を食って、晩飯はカップ麺の在庫で明後日は給料日がある」

「でもあの上司貸してくれるかなぁ?」

 

ゔ~ん、よし、考えた!

「一筆書けば、・・・・千円くらいは。。。」

 

ダメだ!!

 

人との お金の貸し借りはいけない!

「!?」「!?」「!?」

やっぱりオカンや!!

 

 

母さんに泣きついて、朝電話して千円だけATMの口座に入れてほしいと言おう。

 

 

安心、安心の、母さん(おかん)

 

でも・・・

 

 

「でも はいけない」

。。。。。だ けど年も歳だし、

 

「今のカップ麺、どうせふやけているし朝飯にして」

 

「今は何も考えずに餃子を食いに行くこと!!」

「腹が減っては会社(戦)に行けぬ」

じゃあ、行ってくるわ!!!

 

ヤカンに一礼して。。。。。。

 

 

うっしっし、今は最大限の空腹感

たとえ死ぬにしたって空腹で死にたくねぇしな。

 

 

死ぬときは腹ぁ一杯で死んでやる。

 

だが、母さんがチャンスは来ると言ってたしな。

 

 

・・・母さん・・まさか・・・・死ん・・・・・・。

餃子の前に心配性の男は公衆電話にて実家に。

 

 

つぅるるーー、つぅるるーーー、ガチャ、

「あっ、母さん?大丈夫?」

母「何がさ?こんな朝早くに。」

「いやぁ~、母さんがユメに出てきて・・・そ・・・れで」

母「アホ言ってないで、ちゃんと食べてるのか?」

「いやぁ~、それが・・・・・げ、、元気ならそれで良いんだ。」

 

「またね。」

 

母「・・・・・千円だけだよ。」

 

「か、母さん・・・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

朝には一万円入ってた。

 

 

ATMで泣いてるヤツを見るのは初めてだろう。

「くぅ~、母・・さ・・・ん」

「自分らも苦しいのに・・・・。」

 

何とも言えない気持ちになった。。。。。。

 

 

 

 

全部仕組まれたことだろう。

 

 

 

 

いつの時代も、時の流用によって仕組まれているのだろう。

 

 

 

この物語さえも。

 

 

 

 

 

 

 

 

~あとがき~

死さえ考えていた会社員の男の、偶然の偶然での物語が始まる。

そして母の愛情と配慮、一番手のかかる子が実は一番愛しいということ。

あとはいろいろとありますが、読んだ方の想像にお任せ致します。

 

ヤカンの湯気でモクモクとなり、

夢うつつヤカンの精がオカンの精に映り厳しく説いてくれたかのように。

 

ヤカンの精(仕業)せいにした。ってね。

 

 

 

 

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

 

 

八神・八竜

 

 

 

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